茨木のりこ「自分の感受性くらい」|冬になると思い出すこと

詩人、随筆家、童話作家、脚本家の茨木のりこ。
高校生の時に現代国語の先生から教えられた詩です。
この詩を知ったときの衝撃は、未だに忘れることが出来ません。

自分の感受性くらい

以下に引用しました。

自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

谷川俊太郎選 茨木のりこ詩集 岩波文庫

その先生は、私たちのクラスの担任でした。
私は先生に、おすすめの本を教えてもらったり、とても慕っていました。
優しくて文学に精通しているきれいな先生。

しかし、私はある日をさかいに、先生に対してあまり良い感情を持つことが出来なくなりました。

寒い冬の日。
私たちのクラスメイトの一人が、自ら命を絶ちました。
そのときの先生の発言があまりにもひどかった。

確かに、先生自身にもいろんな心労はあったのだろうと思います。
大人になった今なら理解できますが、その頃の私たちには、ただただ信じがたい言葉でした。

「本当に迷惑」

毎年思い出すこと

私は小説はたくさん読みますが、詩はあまり読みません。
心を動かされることにジャンルは関係ないようです。

好きだった先生の本音とこの詩を、毎年この時期になると思い出します。
なぜ、彼女は自ら命を絶ったのだろう。
前日まで、いつも通り、ロッテリアで冗談を言って笑い合っていたのに。
帰りのバスで別れるとき、わざわざ私の腕を掴んで笑顔で「ごめんね」と言った彼女の気持ち。
今となっては、もう誰にも分らない。

私たちが卒業してから5年後、先生は精神を病んで教職を退いたと聞きました。

最後に

人のせいにしない。
全ての結果は、自分自身の至らなさ。

そして、私は今も生きている。