映画「ペコロスの母に会いに行く」感想|思い出が寄り添ってくれる

映画「ペコロスの母に会いに行く」の感想です。

舞台は長崎。

認知症になった母とサラリーマンで男やもめのゆういちの物語です。

実際に介護をされていた岡野雄一さんの原作なので、リアルなのですが、とても心があたたまる物語です。

「ペコロスの母に会いに行く」 あらすじ

長崎で生まれ育ったサラリーマン・ゆういちは、ちいさな玉ねぎ「ペコロス」のようなハゲ頭を光らせながら、漫画を描いたり、音楽活動をしている。男やもめのゆういちは、夫の死を契機に認知症を発症しはじめた母・みつえの面倒を見ていたが、症状が進行した彼女を、断腸の思いで介護施設に預けることになる。過去へと意識がさかのぼることの増えたみつえ。その姿を見守る日々のなかで、ゆういちの胸には、ある思いが去来する。〈映画作家〉(C)2013『ペコロスの母に会いに行く』製作委員会

[引用元]Amazonプライムビデオ「ペコロスの母に会いに行く」あらすじ

【監督】森崎東
【出演者】岩松了 赤木春恵 原田喜和子 加瀬亮

認知症 思い出の中で

認知症の方は、新しいことを覚えておくことはなかなか難しいですが、昔のことはとてもよく覚えています。

私も母が認知症で介護をしていたのですが、子供の頃のことやその頃に出会った人のことは覚えていて、しっかり話をしてくれたものです。

また、よくあることだと思いますが、思い出が捻じ曲げられていることもあります。

自分の想像と現実が混ざってしまうようです。

 

岡野みつえさん(赤木春恵)は、認知症が進みつつありますが、とても可愛いおばあちゃんです。

息子の雄一さんが帰って来るのを、駐車場に座ってずっと待っています。

雄一さんに「ダメだよ」と言われたことも、とても素直に聞いてくれるのですがすぐに忘れてしまうのです。

徳利とお猪口

みつえさんは、若い頃(原田貴和子)とても苦労したようです。

夫のさとる(加瀬亮)さんが、酒乱だったのです…。

まだ小さい頃のゆういちさんを連れて、心中を考えたこともあったようです。

 

しかし、みつえさんの思い出の中のさとるさんは、とても優しい夫なのです。

認知症のリアルなエピソード

認知症を扱った映画はたくさんありますが、どちらかというと悲惨なものが多い印象です。

しかし、本作は真逆でとても心があたたかくなる作品です。

そして、認知症の方の行動や言動が、とてもリアルです。

実際に、お母さまの介護をされていた岡野雄一さんの原作だからだと思います。

私も認知症の母の介護をしていましたが、「そうそう!」と映画を観ながら何度も頷きました。

注意していても、突然いなくなったり、オレオレ詐欺にあいそうになったり、家の中にメモをたくさん貼って忘れないようにしたり…。

 

ゆういちさんは、広告代理店の営業をしていますが、音楽活動もしていて漫画も描いています。

ゆういちさんには奥さんがいないので、一人でみつえさんを介護しているのですが、限界が近づいてきます。

そして、症状が進み始めたみつえさんを、施設に入れるべきときがやってきます。

 

ゆういちさんは、行きつけの喫茶店のマスターに「母ちゃんを施設に入れようかと思っている」と言ったら、「親を捨てるようなことをするのか」と言われてしまいます。

これも、よくある話です。

私も、母を老人ホームに入居させることになったとき、クラフト教室の生徒さんに「先生は、親を見捨てるんですね」と言われたことがあります。

その生徒さんのお母さまも認知症で、お姉さんが介護されていたようです。

しかし、結局その生徒さんも、お母さんをグループホームに入れることになったようですが…。

 

これは、私個人の考え方ですが、ある程度、認知症が進んでしまった場合、条件が合えばプロにおまかせすることは、介護される側にとっても介護する側にとっても、安全で安心できるものです。

親を施設に入れることは、もちろん、とても辛いことです。

映画の中でも、ゆういちさんの葛藤が描かれています。

ゆういちさんには息子がいますが、ほぼ一人で介護しているので、これは最も正しい選択だったと思います。

 

私が母を介護していた頃、こんな事件がありました。

母親を一人で介護していた40代の女性が、ちょっと目を話した隙に母親が家を飛び出し、車にはねられて亡くなってしまったのです。

そして、その娘さんは保護責任者遺棄致死罪に問われる可能性があると報道されていました。

結局、どんな判決が出たのかまでは報道を追わなかったのですが、一人で介護することの大変さを世間は理解してくれないのだな…と悲しくなったことを思い出します。

優しいゆういちさん

車椅子を押す女性

それにしても、ゆういちさんは、とても優しい息子です。

グループホームに入ったみつえさんを、頻繁に面会に行きます。

そして、母の妹たちを連れてみつえさんに会わせてあげたり、車椅子で外に出かけたり。

ゆういちさんは、ペコロス岡野という名前で、アーティスト活動をしているのですが、ペコロスとはあの「小さい玉ねぎ」のことです。

グループホームに入ったみつえさんを訪ねたゆういちさんは、自分のことを忘れてしまった母に、自分の禿げ頭を見せるのです。

すると、みつえさんは安心してゆういちさんを思い出し、頭を撫でてくれるのです。

このエピソードは、とても心温まるものでした。

 

しかし、いつか、ゆういちさんのことも忘れてしまう日がやって来るのです。

認知症は、調子のよい日と悪い日の差が激しく、調子の悪い日は、家族のことも忘れてしまいます。

ゆういちさんが、みつえさんに禿げ頭を見せても、思い出してくれなかった日、ゆういちさんは涙を流します。

このシーンの岩松了さんの演技は、素晴らしいものでした。

いつも、明るく元気なゆういちさんですが、どうしても、涙をこらえきれなかったのです。

私も涙腺崩壊でした。

親に自分を忘れられてしまうのは、仕方がないこととわかっていても、やはりとても辛いものです。

この映画の中で、ゆういちさんが涙を流したのはこのシーンだけです。

長崎という街の背景

みつえさんが子供の頃、長崎に原爆が落とされます。

子供の頃、仲良くしていたみいちゃん(原田知世)は、ある日、長崎に行くことになります。

お互い「手紙を書くね」と約束するのですが…。

 

原田貴和子・知世姉妹が、この映画で共演されていたのですね。

みつえさんとみいちゃんの関係も、とても悲しいものですが、お互い知らないところで、二人はずっと支え合って生きていたのです。

それが、どんなものなのかは、映画をご覧になって確かめてみてください。

 

映画の中で、長崎のランタン祭りの様子が描かれています。

ゆういちさんは、みつえさんやみつえさんの妹、施設の人たちといっしょにお祭りに出かけます。

そのシーンも、とても感動的です。

みつえさんにとって、きっと幸せな時間だったと思います。

とても幻想的なシーンで、ぜひ映画でそれを感じてみていただきたいと思います。

最後に

映画「ペコロスの母に会いに行く」の感想でした。

出来れば、一生認知症にならずに、最期を迎えらえることが理想的ですが、いつ誰が罹るかもしれない認知症。

それを差し引いても、映画としてとても素晴らしいので、一度ご覧になってみてください。

ユーモアたっぷりの岩松了さんの演技が、暗くならずに、認知症のリアルが描かれています。

 


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