映画「硫黄島からの手紙」 感想│残された数百通もの手紙

海に浮かぶ小島

こんにちは。

はるき ゆかです。

映画「硫黄島からの手紙」の感想です。

兵士たちにとって、家族に書く手紙や家族から届く手紙がどれほど心の支えになっていたか。

西郷が生きて家族の元へ帰れたであろうことは、生き抜く気持ちを持ち続けたから。

「硫黄島からの手紙」 あらすじ

2006年、硫黄島。地中から発見された数百通もの手紙。それは、61年前にこの島で戦った男たちが家族に宛てて書き残したものだった。届くことのなかった手紙に、彼らは何を託したのか__。(C)2006 Warner  Bros.  Entertainment Inc. and Dreamworks LLC. All rights reserved.

[引用元]Amazonプライムビデオ「硫黄島からの手紙」あらすじ

【監督】クリント・イーストウッド

登場人物

栗林忠道/渡辺謙

西郷昇/二宮和也

西竹一中佐/伊原剛志

花子/nae

清水洋一/加瀬亮

伊藤中尉/中村獅童

硫黄島の戦い

1945年2月、硫黄島での戦いは始まりました。

硫黄島を守り抜くことで、本土への攻撃を遅らせることが出来る。

そして、日本軍は出来る限りの持久戦を繰り広げます。

硫黄島で戦っていた兵士たちの多くが、職業軍人ではなく一般市民から徴収された兵士でした。

硫黄島での戦いの最高司令官・栗林忠道大将(渡辺謙)は、アメリカに駐在していたこともある人物です。

そして、水際作戦を避け、バンザイ突撃(玉砕を目的とした突撃)を厳禁とし、徹底抗戦を指示しました。

本作の中でも、栗林大将は兵の命を粗末にするなと士官たちに言い続けています。

そして、栗林本人は、最終的に、大腿部に重症を負い、その場で自決しています。

家族への手紙

海岸

兵士たちは、家族と多くの手紙のやりとりをしています。

戦地では、手紙だけが家族とつながる唯一の方法なのです。

栗林の手紙

栗林大将は、子供たちへ絵手紙を残しています。

もともと文才があり、絵を書くことも得意でした。

そのため、イラスト入りの手紙を子供たち宛に書いていたのです。

子供にとって、それはどれほどうれしいものだったでしょうか。

これらの手紙は、『「玉砕総指揮官」の絵手紙』『栗林忠道 硫黄島からの手紙』として、刊行されています。

ぜひ、読めるものなら読んでみたいです。

家族に宛てた手紙は、家庭人としてのあたたかい人柄がにじみ出ているものだと言われています。

西郷の『手紙』

西郷(二宮和也)は、毎日のように妻の花子(nae)宛てに手紙を書いています。

検閲に引っかかることも多かったようですが…。

手紙を書くことで、自分自身を落ち着かせていると西郷自身が、本作の中で手紙に書いています。

そして、西郷は栗林大将に三度命を救われています。

栗林が着任した日に、上官から体罰を加えられていたのを止められたとき。

二度目は、伊藤中尉(中村獅童)に首をはねられそうになっていたのを止められたとき。

三度目は、最後、栗林を先頭に突撃するときに、西郷だけは栗林から重要書類を燃やしておくように命じられ、残ることになります。

そして、西郷は皆の書いた手紙を麻袋に入れ、土中に埋めるのです。

リアルな戦争の描写

戦争の描写が、かなりリアルに描かれています。

負傷兵や戦死者

戦争で負傷したり、亡くなるということは、ここまで酷いものなのかと思い知らされます。

爆撃や銃撃戦。

こんな過酷すぎる環境に、ちょっと前までパン屋さんだった西郷のような人が、放り込まれるのが戦争です。

銃の音

以前、自衛隊員だった人から聞いたことがありますが、銃声は割と軽めの音がするそうです。

映画や刑事ドラマなどで聞くような、重い大きな音ではないとのこと。

ライフルや機関銃の音が、本作は割と軽めなのが、逆にリアルでした。

憲兵だった清水

あとから部隊に加わった清水(加瀬亮)は、もともと憲兵でした。

清水は、ある日、日章旗を掲げていない家を「非国民」だと言う上官に命令され、その家を訪ねます。

その家には犬がいて、憲兵に吠えたため、犬の命を奪えと言われたのですが、清水には出来ませんでした。

それが原因で、清水は前線に送られることになったのです。

よく祖母が言っていましたが、憲兵は本当に理不尽で怖かったそうです。

何でもないことに怒鳴り散らし、痛めつける。

犬の命を奪うことが出来なかった清水は、憲兵には向いていませんが、前線で戦うことなどそれ以上に無理なことだったのだと思います。

クリント・イーストウッド監督のフラットな目線

クリント・イーストウッド監督は、日米どちらかに肩入れすることなく、とてもフラットな目線でこの戦争映画を制作されています。

第二次世界大戦で、日本人はドイツのナチスと同様、悪事の限りを尽くしたように言われていました。

そのため、私にはどこか日本という国を愛することが出来なかったところがありました。

その嫌な感情を、この映画は払拭してくれたような気がします。

バロン西のスポーツマンシップ

西中佐(伊原剛志)も実在の人物で、ロス五輪の乗馬の金メダリストです。

アメリカにも友人が多く、心の底ではアメリカと戦いたくなかったのかもしれません。

そして、今は敵であるアメリカ人捕虜にも紳士的に接し、栗林大将と同じく、「兵を無駄死にさせるな」という考え方の人です。

登場シーンから素敵で、最期まで男らしくて。

こういう職業軍人も日本にはいたのだと、日本人として誇りに思えました。

バロン西は、やはりスポーツマンなのです。

投降した日本人捕虜を

清水は、あとから行くという西郷と共に、投降することを決めます。

ただ、お国のために死のうとする日本人ばかりではなく、自分の気持ちに正直に投降した兵士もいたということです。

そして、その無抵抗な兵士の命を奪うアメリカ人もいたことが描かれています。

今まで私が観てきた戦争映画では、アメリカ人は捕虜を殺害しない映画が多かったので、もちろん、戦争なのですから、こういうこともあっただろうと思います。

本作は、この点においても、とてもフラットでリアルな戦争映画だと思いました。

二宮和也という俳優の力量

本作が撮影されていた頃、二宮和也さんはまだ22~23歳くらいだったのでしょうか。

それにしても、この演技力。

本当に素晴らしいと思います。

栗林大将が足を負傷し横たわったまま、「ここはまだ日本か?」と西郷に問います。

西郷は「ここはまだ日本であります」と答えます。

そして、栗林が、アメリカ人の友人からプレゼントされた銃で自害するのですが、そのシーンの二宮さんの演技は圧巻です。

栗林大将の方を見ることなく、無表情なまま涙を流す西郷。

映画の冒頭からラストに向かうにつれて、少しづつ西郷の目が死に始めます。

仲の良かった樫原が戦病死し、清水が撃たれて亡くなり…。

そして、栗林大将の亡くなったあとの西郷の目は、空洞のようです。

しかし、彼は大切な兵士たちの手紙を保管し、生きて故郷に帰るのです。

まだ、妻の花子のお腹にいた娘と約束した通りに。

最後に

映画「硫黄島からの手紙」の感想でした。

この映画は、私自身が日本という国をもう一度見直すきっかけになった映画です。

最も象徴的だったのは、ずっと死ぬことを自分にも他人にも強いてきた伊藤中尉(中村獅童)が、結局死ねずに生き残ったこと。

この伊藤中尉の存在こそが「日本人の本音」だったのではないかと思います。

誰でも死ぬのは怖い。

しかし、ずっとお国のために死ぬことを教育されてきたために、それを信じるしかなかったのです。

そして、一人に取り残されたときに、自分の本当の気持ちに気づいて…。

硫黄島での戦いをアメリカ側から描いたクリント・イーストウッド監督の「父親の星条旗」も、ぜひ観てみたいと思います。

それにしても、二宮くんが素晴らしいです!


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