こんにちは。
はるき ゆかです。
映画「きみはいい子」の感想です。
大人も子供も抱きしめられることで救われるのだということを、再確認させてくれる映画でした。
ラストシーンで、走る岡野先生の姿に感動します。
「きみはいい子」 あらすじ
まじめだが優柔不断で、肝心なところで一歩踏み出すことができない新米の小学校教師・岡野。近所のママ友たちとの表面的な付き合いの陰で自分の娘に手をあげ、自身も親に暴力を振るわれていた過去を持つ雅美。最近感じはじめた認知症の兆しにおびえる独居老人・あきこ。とあるひとつの街に暮らし、悩みや問題を抱えて生きるおとなと子どもたち。彼らが、人と人とのつながりに光を見だし、小さな一歩を踏み出していく。(C)2015アークエンタテインメント
[引用元]Amazonプライムビデオ「きみはいい子」あらすじ
【監督】呉美保
【出演】高良健吾・尾野真千子・池脇千鶴 他
虐待の連鎖
雅美(尾野真千子)は、夫が単身赴任中で一人娘と暮らす専業主婦。
娘のちょっとしたいたずらや失敗にどうしてもイライラを募らせてしまい、手をあげてしまいます。
そんな雅美の腕には、煙草を押し付けられた火傷のあとがいくつもあります。
雅美自身も、親に虐待されていたのです。
同じマンションのママ友の家に行くときは、チャイムを鳴らす前に、必ず中の様子を伺います。
子供を怒鳴るママ友の声が収まるのを待っているのです。
ここに、雅美のようなママがたくさんいることがよくわかります…。
雅美は、公園でのママ友との付き合いも少しうんざりしているようですが、ただヨコ(池脇千鶴)とだけは、少し気を許してつき合えるようです。
ヨコを演じる池脇千鶴さんの演技が本当に素晴らしいです。
夫は小学校教師(おそらく高橋和也さん演じるタクヤ)で、小さな二人の子供を育てているのですが、自分のことはあまり構わず、子育てしているママの感じがとてもよく出ていて、うまいのです。
ヨコは、忙しい中にも、とても余裕を持って子育てしているように見えるのですが…。
小学校教師の苦労

小学校の教師とは、何て大変な仕事なんでしょうか。
よっぽど教師という仕事に情熱がないと、やってられない仕事だと改めて感じました。
主人公の新米の小学校教師・岡野(高良健吾)は、家に帰ってきたらぐったり疲れ切っています。
問題を抱えた子供のことはもちろん、理不尽な文句を教師に言うモンスターペアレント、虐待児問題…。
岡野が担任をしているクラスには、ネグレクトと義父からの暴力を受けている生徒がいます。
食事もろくに食べさせてもらえず、いつも同じ服を着ています。
母親は看護師をしていますが、義理の父親は働きもせずパチンコばかりしています。
岡野は、校長に相談し、養護教諭から父親の暴力について聞いてもらいますが、生徒は首を横に振るばかりです。
そんな日々の中で、岡野は、姉のちょっとした言葉から、あることを「宿題」にすることを思いつきます。
こんな生活をしている子供が、日本にはどれほどいるのだろうかと考えてしまいます。
もしかしたら、自分の近くにもいるのかもしれませんが、ただ私が知らないだけ。
抱きしめること

人は、抱きしめられることで安心や人のぬくもり、優しさを感じます。
特に、この映画を観て、子供は抱きしめてあげることがどれほど大切なことなのか、改めて感じました。
いつも教室で大騒ぎして手が付けられない小学生たちに、岡野は「家族の誰かに抱きしめてもらうこと」という宿題を出します。
その宿題を出すきっかけになったのが、離婚して実家に戻ってきている姉の子供が、疲れ切っている岡野をぎゅっと抱きしめながら「がんばって」と背中をポンポンとしてくれたことです。
そのことに岡野は、とても癒され優しい気持ちになるのです。
そして、岡野は、姉の「私が優しくすると、あの子も人に優しくなる。子供を可愛がれば世界が平和になる」という言葉に、この宿題を思いついたのです。
翌日、子供たちは、照れながらもちゃんと「宿題」をしてきて、様々な感想を岡野に話してくれます。
「優しい気持ちになった」
「赤ちゃんの頃を思い出した」
「安心した」
うまく言葉に出来ない子供もいますが、みな一様に幸せそうな顔をしています。
このときの子供たちの演技が、とても自然でリアルでした。
セリフとは思えない演技です。
これは、演出なのか、実際に子役たちにこの「宿題」を出して、やってきてもらったのかもしれないと思わせるほどわざとらしさがないのです。
とても、素敵な心温まるシーンです。
一方、雅美は、ヨコの家に娘と遊びに行ったときに、雅美が娘に手をあげてしまうことをヨコにさとられてしまいます。
ヨコには、雅美の気持ちがわかる理由があるのです。
そして、雅美をしっかりと抱きしめるヨコ。
人は、愛されたから人を愛せる、優しくされたから人に優しく出来るのです。
美しい桜の花びら

自閉症の少年・ヒロヤは、通学途中に出会う老女・アキコに、毎日「こんにちは さようなら」と挨拶をしています。
アキコは、認知症の兆しが見え始めた自分に、日々、おびえて暮らしています。
アキコは、桜の季節でもないのに、桜の花びらの話をしたりするなど、近所でも「少しボケてる」と噂されています。
そんなアキコは、ヒロヤとの毎日のやり取りに、とても励まされています。
ある日、ヒロヤがパニックの陥っているところを見たアキコは…。
一方、「宿題」を出された翌日、虐待を受けている生徒は欠席していました。
おそらく、その宿題をすることが出来なかったのだと思います。
岡野は、ヒロヤの通う特別支援学級での授業を見て、少年の家まで行く決心をします。
そして、岡野は少年の家まで走ります。
ラストシーンは、少年の家のドアをノックする岡野。
結末は、映画の中では明らかにされません。
そのため、いろいろな解釈が出来ると思います。
私はそのあと、岡野が少年を助け出すことが出来たのだと思いました。
そして、岡野が少年をしっかり抱きしめるのです。
最後に
映画「きみはいい子」の感想でした。
とてもいい作品です。
子供を巡るさまざまな問題について、深く考えさせられる映画でした。
ヨコがマサミの娘に冗談で「うちの子になる?」と何度か聞くのですが、娘は「いや!」と答えてマサミに抱きつきます。
子供は、いつどんなときも、母を求めるのです。