映画「大統領の執事の涙」感想|7人の大統領に仕えた黒人執事の物語

映画「大統領の執事の涙」の感想です。

綿花畑で働く奴隷から、ホワイトハウスの執事になったセシル。

さまざまなアメリカの大きな事件を、間近で目の当たりにしながら大統領に忠実に仕えた1人の黒人男性の物語。

「大統領の執事の涙」 あらすじ

彼は見ていた。7人の大統領に仕えた黒人執事。世界の中心〈ホワイトハウス〉知られざる物語ー綿花畑の奴隷として生まれたセシル・ゲインズは、見習いからホテルのボーイとなり、遂にはホワイトハウスの執事にスカウトされる。キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争・・・、アメリカが大きく揺動いていた時代。セシルは、歴史が動く瞬間を、最前で見続けながら、忠実に働き続ける。黒人として、そして、身に着けた執事としての誇りを胸に。そのことに理解を示す妻とは別に、父の仕事を恥じ、国と戦うため、反政府運動に身を投じる長男。兄とは逆に、国のために戦う事を選び、ベトナムへ志願する次男。世界の中枢にいながらも、夫であり父であったセシルは、家族と共に、その世界に翻弄されていく。(C)2013, BUTLER FILMS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

[引用元]Amazonプライムビデオ「大統領の執事の涙」あらすじ

【監督】リー・ダニエルズ
【出演者】フォレスト・ウィテカー オプラ・ウィンフリー ジョン・キューザック ジェーン・フォンダ アラン・リックマン テレンス・ハワード

根深い人種差別

アメリカ南部では、つい最近まで黒人差別が横行していました。

私を含め、日本人は、アメリカではかつて奴隷制度があって、黒人が差別を受けていたのは、遠い昔のことのように感じていた人が多いのではないでしょうか。

1926年。

主人公のセシル(フォレスト・ウィテカー)は、綿花畑の奴隷として働いていました。

ある日、横暴な雇い主に乱暴された美しい母(マライア・キャリー)は廃人となり、その横暴な行動に対して、たった一言「おい」と声を掛けただけで、父は射殺されてしまいます。

この頃は、黒人は人間扱いされていなかったんですね…。

その様子を見ていた雇い主の家の老女、ミス.アナベス(おそらくこの家の最も年長者ですべてを取り仕切っている女性)が、セシルを「家働きの下男」(ハウス・ニガー)にしてやろうと言います。

ハウス・ニガーの仕事を一つづつ教えてくれたのも、この女性です。

「音を立てないこと。給仕するときは息を殺す。部屋の空気になりなさい」

 

セシルにとっては、これから始まるホワイトハウスの執事への道は、このときにスタートしていたのかもしれません。

 

成長したセシルは、この農園にいたら、いつか父を射殺したあの男に、自分も殺されると感じ、外の世界に出ていくことになります。

しかし、外の世界は、農園の生活よりさらに厳しいものだったのです。

この時代、白人は黒人を殺害しても罪に問われず、黒人は法に守られていなかったのです。

 

空腹に耐えられなくなったセシルは、ある白人のお屋敷の窓ガラスを割り、その家に忍び込んで食べ物を食べてしまいました。

ガラスが割れる音を聞いたその家の黒人の使用人が、セシルを見つけ、ケガの手当てをしてくれます。

その間に、セシルは生い立ちを聞かれ、「人手はいらないか。自分は給仕が出来る。ハウス・ニガーだった」というと、その男性に頬を叩かれ、「ハウス・ニガーという言葉は、白人の使う言葉だ」と叱られるのでした。

 

彼は、自分自身が黒人であることに誇りを持っていたのです。

 

そして、セシルはこの家に給仕として雇われることになります。

農園で身に着けたスキルより、さらに上の給仕としてのマナーを教えられます。

「主人が思わず微笑むような」給仕をと。

 

セシルの教育をしてくれた男性は、とても優秀な給仕で、ワシントンのホテルの支配人から執事をやらないかという話が来ます。

しかし、彼は、セシルを推薦しておいたというのです。

尻込みするセシルに彼は「二つの顔を持て。本当の顔と白人に見せる顔だ」と言います。

南部の白人より、北部の白人は、少しだけ黒人差別の意識がないようです。

 

1957年。

セシルは、高級ホテルの給仕の仕事に就くことになります。

高級ホテルのラウンジでは、政治の話をする人々が多く、セシルに意見を求める人もいるのですが、「私は政治に興味がございません」とほほ笑むのです。

黒人であるセシルの目の前で、白人たちが「ニガー」という侮蔑の言葉を使っていても、セシルはひたすらに自分の仕事に専念するのです。

 

セシルは、ワシントンの高級ホテルで働いていることにとても満足していました。

今では、ホテルで知り合った女性・グロリアと結婚し、家を持ち、二人の息子がいます。

 

農園にいた頃は、ハウス・ニガーになったことだけでも、農園で働くことよりずっと楽しいと感じていたセシルにとっては、今の暮らしは夢のようなことだったのです。

 

ある日、ホテルの白人の上司から、セシルに電話がありました。

白人からの電話は、セシルにとって、いつも悪い知らせばかりだったのですが、この電話だけは違いました。

ホワイトハウスで執事をやらないかという電話だったのです。

 

ホワイトハウスでも、上司の執事から「ホワイトハウスでは、『見ざる聞かざる』で給仕しろ」と言われ、セシルはそれに従います。

ホテルで身に着けたセシルの給仕は、ホワイトハウスで働く人々にとっても、舌を巻くほど手の込んだ素晴らしいものでした。

父とふたりの息子

ホワイトハウスで、執事をすることになったセシル。

しかし、長男のルイスは、黒人差別反対運動に関心があり、父の仕事を誇りに思うことが出来ません。

南部では、いまだにひどい黒人差別が行われていました。

黒人の少年が少し白人女性を見ただけで、殺害されるという事件もあり、ルイスは、その事件の抗議集会に参加しようとしていました。

 

ルイスは、高校を卒業し、南部のフィクス大学に入学します。

1960年、ルイスは一人の女子学生・キャロルに声をかけられます。

それから、二人は「同志」となります。

 

二人は、レストランの席が、有色人種と白人にわけられていることに反抗したり、さまざまな黒人差別反対運動に参加していきます。

そのことで逮捕されるルイス。

30日間、刑務所に入らなければならなくなります。

 

セシルとルイスは、激しく対立します。

ルイスは、出所後もフリーダム・ライド運動などに参加し、激化する人種差別抗議運動に身を投じていきます。

家にはほとんど帰って来なくなり、母のグロリアを悲しませます。

しかし、キング牧師暗殺後、7年ぶりに、恋人と共に家に帰って来るルイス。

 

そのときも、ルイスとセシルは、また衝突してしまいます。

それは、取り返しのつかないと言えるほどの争いでした。

 

一方、弟のチャーリーは、ベトナム戦争に兵士として志願します。

「兄さんは国と戦う。俺は国のために戦う」

ルイスは、チャーリーのお葬式には出ないと言い、兄弟までが言い争うことになります。

 

黒人差別さえなければ、こんな悲しいことは起こらなかったはずです。

 

そして、ルイスがブラックパンサー党のやり方についていけなくなった頃、セシルとグロリアのもとに、チャーリーの戦死の知らせが届くのです。

7人の大統領と世界が動く瞬間に立ち会って

1957年。第34代大統領、ドワイト・D・アイゼンハワー(ロビン・ウィリアムズ)。

セシルは、初めて、白人が黒人のために働いた大統領だと言います。

自分がこの大統領に仕えることで、世の中は変わると、セシルは信じています。

 

1961年。第35代大統領、ジョン・F・ケネディ(ジェームズ・マースデン)。

ケネディは、世間知らずのお坊ちゃまだと言われていましたが、警察に黒人が迫害されているニュースをTVで観て、「これがアメリカか!」と怒りを表します。

そして、公の場で黒人が白人と同様のサービスを受けられるようにする法案を通すと宣言します。

その直後、ダラスでケネディは暗殺されてしまいます。

 

1964年。第36代大統領、リンドン・ジョンソン(リーヴ・シュレイバー)。

愛犬家。

そして、ジョンソン大統領の時代に、黒人が弾圧され虐殺される、あの「血の日曜日」が訪れます。

平穏に行われていたデモ行進に騎馬警察隊が襲い掛かり、多くの活動家が血を流します。

アメリカには平等な投票権がありますが、黒人というだけで妨害されていたのです。

ジョンソン大統領は、それを改めるよう努力しました。

 

1969年。第37代大統領、リチャード・ニクソン(ジョン・キューザック)。

ニクソン大統領は、策略家だったようです。

ケネディとも大統領選挙で争いましたが負けてしまい、次回の選挙には黒人票を獲得するために、黒人企業家の援助を行うことを考えます。

しかし、セシルの息子のルイスが所属するブラックパンサー党をテロリスト集団だとし、徹底排除すると言います。

その会議に執事として仕えていたセシルは、初めて仕事中に感情を昂らせるのでした。

 

1974年。第2期ニクソン政権。

疲れ果てているニクソン大統領。ベトナム戦争が終結する直前です。

 

セシルは、第38代大統領、ジェラルド・R・フォード大統領第39代大統領、ジミーカーター大統領にも仕えます。

 

1986年。第40代大統領、ロナルド・レーガン(アラン・リックマン)政権。

レーガン大統領は、生活に困窮する市民にお金を送金したり、温情派の政治家だったことがわかります。

セシルは、今までにも、黒人の使用人の待遇改善のために、何度か白人の上司に訴えていたのですが、毎回、不満なら辞めろと言われていました。

しかし、レーガン大統領は、それを聞き入れてくれたのです。

ナンシー夫人(ジェーン・フォンダ)にも、祝福され、夫婦で公式晩餐会に招待されます。

 

この頃には、絶縁状態になっていたルイスは、犯罪者ではなく、アメリカの良心のために戦ったヒーローになっていました。

 

そして、セシルは、大統領の晩餐会に参加して以来、仕事に対する情熱を失ってしまいます。

アメリカは、他の国の歴史にはいろいろと意見をするが(強制収容所など)、200年もの間、黒人を差別してきた歴史を持っているのです。

そして、それに目をつぶってきたと。

 

セシルは、ホワイトハウスの執事の仕事を退くことになりました。

そして、ルイスが指導するデモに参加するのでした。

ようやく、セシルとルイスは和解することが出来ます。

 

セシルも、ホワイトハウスでの仕事の待遇について、黒人の権利を訴え続けていたのです。

二人の想いは、実は同じ方向を向いていたのだと思います。

黒人初の大統領・バラク・オバマ

セシルがホワイトハウスの仕事を辞めてから、第41第大統領、ジョージ・H・W・ブッシュ第42代大統領、ビル・クリントン第43代大統領、ジョージ・W・ブッシュ政権を経て、バラク・オバマが黒人初の大統領候補となります。

そして、ルイスも政治家に。

本作には、他の大統領と違い、オバマ氏が実際の映像で、出演されています。

バラク・オバマが大統領になった瞬間を、ルイスと共に、セシルは涙を流して喜びます。

愛する妻・グロリアは、そのときすでに失ってはいましたが…。

 

映画は、セシルが、初めてホワイトハウスに訪れたときと同じ椅子に座り、オバマ大統領にホワイトハウスに招かれるシーンで終わります。

「Yes, we can」

最後に

映画「大統領の執事の涙」の感想でした。

歴代大統領の性格が垣間見れるのも、この映画の楽しいところでした。

そして、オバマ大統領誕生と共に、アメリカに、ようやく全ての黒人の当たり前の権利が認められたと言えるのかもしれません。

本作も、事実に基づいた物語です。

おすすめの映画です。

 


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