映画「飼育」 感想|すべてなかったことで丸く収まる

こんにちは。

はるき ゆかです。



映画「飼育」の感想です。

大江健三郎氏の原作は、学生時代に読みました。

かつての日本の村社会の事なかれ主義と日本人のある種、独特な考え方がとてもよくわかる映画です。

「飼育」感想 はじめに

あらすじ

大江健三郎の同名小説を、松竹退社後の大島渚が初めて独立プロで監督した問題作。昭和20年の初夏。東京郊外にある山村にアメリカ軍の飛行機が墜落した。村人たちの山狩りで猟の罠にかかった黒人兵が捕まり、村に連れてこられる。地主の蔵に閉じ込め、輪番制で飼うことになったが…。

[引用元]Amazonプライムビデオ「飼育」あらすじ

【監督】大島渚

【原作】大江健三郎

登場人物

鷹野一正/三國連太郎

黒人兵/ヒュー・ハード

石井弘子/小山明子

鷹野かつ/沢村貞子

鷹野久子/中村雅子

幹子/大島瑛子

戦時中の日本人

本作は、1961年に公開の映画です。

戦後、16年。

黒人兵を捕える

本作の舞台は、東京近郊のある村。

アメリカ軍の戦闘機が村の近くに墜落し、落下傘で着陸した黒人兵が猟の罠にかかり、捕らえられてしまいます。

このときの村人たちの考え方が、現在と比べてとても考えられないものでした。

米兵なので、蔵につないでおけば、食べ物など与える必要はないだろう。

しかし、何かあったら、憲兵がうるさい。

何か褒美がもらえるかもしれないから食べ物を与えよう。

全く人間扱いされていないのです。

そして、輪番制で黒人兵の世話をしようということになるのですが…。

農村であっても、東京から親戚が疎開して来ていたり、戦時中であることから、食料は乏しい。

そのため、誰もが黒人兵に食料を与えるのを嫌がっています。

しかし、子供の中には、黒人兵と仲良くなる子もいて、少しホッとする部分もあります。

すべては黒人兵のせい

東京から疎開してきている子供は、配給だけで暮らしているので、いつもお腹を空かしています。

そして、他の家のご飯の盗み食いが多発。

それが問題になって、本家の鷹野正一(三國連太郎)に相談に行くと、黒人兵のせいにすればいいという始末です。(黒人兵に盗まれたことにするという意味?)

何か問題が起こったら、とりあえず、黒人兵のせいにすればいい…となって、村の問題は次々と解決していきます。

出征兵士が行方不明

次郎という村の青年に召集令状が届きます。

しかし、出征の日、次郎は行方不明になります。

出征前ということで、東京から疎開してきている本家の姪っ子の幹子と無理やり関係を持ち、彼女には東京に好きな人がいるとわかったことがショックだったのかもしれません。

その次郎がいなくなったことまでが、黒人兵のせいにされてしまいます…。

次郎の弟の八郎は、兄がいなくなったのは、本家の姪っ子のせいだと思っていて、それを村中に言いふらすと言ったことから、本家によって木にくくりつけられるのです。

そして、黒人兵を連れてきて、その手を取り、八郎を殴りつける村人。

八郎は、黒人兵の世話を進んでやっていたのです。

自暴自棄になった八郎は、黒人兵にナタを持って襲いかかろうとします。

もみ合っているうちに、東京から疎開してきていた少女が、崖から落ちて亡くなってしまいます。

黒人兵は、崖の下まで行って少女を助けあげてくれるのですが、何故か「あいつさえいなければ…」という村人たちの考えで、少女の死さえも黒人兵のせいになってしまいます。

もう、こうなったら、何が起こっても黒人兵のせいです…。

同じ標的を持ったとき

日本人が同じ標的を持つと、全員で攻撃するのは今と変わらないのかもしれません。

何だか、とても嫌な気持ちになりました。

その後も、嫌なことが起こると「これはあの黒人兵がいるからだ」ということになり、本家の鷹野正一が、猟銃で黒人兵を射つと言い出します。

黒人兵は、仲良くなった村の子供を盾にしているのに、正一が猟銃を打ち込もうとしたことから「あの子は本家が外で作った子供だから憎いんだ」という女性まで現れます。

そして、何もかもが黒人兵のせいになり、最後には本家の鷹野正一がナタを振るい、黒人兵の命を奪ってしまいます。

何だか理解の範疇を超えていて、どうしてそうなるのかもよくわかりませんが…。

東京の空が赤く染まって

東京から疎開してきている人たちが、東京の方向が火で赤く染まっているのを見て、心配しています。

すると、村の子供たちが東京から疎開してきている子供に「東京のバカ奴ら!お前の母ちゃんも燃えてるぞ!いい気味だ」と言ったり…。

田舎の人達が、穏やかでのんびりしているというのは、幻でしょうか。

もちろん、人によるとは思いますが…。

しかし、このコロナ禍にあっても、田舎の方がコロナに感染した人を差別したり、東京から帰郷した人に怪文書を送ったり…。

ちょっと怖いです。

田舎の良いところもあるとは思いますが、都会でしか暮らしたことがない私には理解に苦しむ部分が多いです。

全てなかったことに

ちょうど黒人兵を土の中に埋めているところに、終戦の知らせが入ってきます。

村人全員で、「黒人兵など初めからいなかったことにしよう」と土をかぶせるのです。

そして、村には、何事もなかったことになりました。

黒人兵も最初からいなかった。

揉め事も何もなかったと。

次郎が戻ってきた

終戦の知らせとともに、召集令状が来ていたのに、逃げ出していた次郎が戻ってきます。

もし、進駐軍が来て黒人兵のことを聞かれたら、次郎に罪を被ってもらおうということになると、次郎は怒り出し暴れます。

そして、次郎が逆に刺され、亡くなってしまいます。

しかし、これは次郎ではない。

次郎は戦争に行ったまま帰ってこなかったことにしよう。

これで、全て丸く収まった。

村社会を守るために、全て「なかったこと」にするのでした。

最後に

映画「飼育」の感想でした。

正直、観終わったあとの気持ちはとても陰鬱な気分でした。

何か悪いことが起こると、何かのせいにしたり、なかったことにしたり…。

全て見て見ぬ振り。

それに比べて、黒人兵の気持ちの清らかなこと。

何だか、とても嫌なものを突きつけられた気分です。

しかし、目をそらすことも出来ません。


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