こんにちは。
はるき ゆかです。
映画「国際市場で逢いましょう」の感想です。
ドクスの家長としての優しさ、責任感、妹のマクスンの手を離してしまったことへの後悔…。
物語は笑いもあり、温かい涙が溢れる傑作韓国映画です。
映画「国際市場で逢いましょう」はじめに
あらすじ
朝鮮戦争の時の混乱の中、興南から脱出しようとしていたドクスとその家族。その途中で父と一番下の妹のマクスンと離れ離れに。長男のドクスは父から「お前が俺の代わりに家長になるんだ」と一家を任される。釜山に渡ったドクス一家は、国際市場にある叔母の露店「コップンの店」で働くことになった。ドクスは父とこの店で再会する約束をしたのだ。成長したドクスは家計を支え、弟の大学進学のお金を稼ぐため、親友のダルグと共に西ドイツに炭鉱夫として出稼ぎに行き、戦争中のベトナムへも。幾度も命の危機にさらされながらドクスは一家の家長として自分の夢だった大学進学もあきらめて働き続けた…。
【監督】ユン・ジェギュン
登場人物
ユン・ドクス/ファン・ジョンミン
オ・ヨンジャ/キム・ユンジン
チョン・ダルグ/オ・ダルス
ナム・ジン/ユンホ
ドクスの父/チョン・ジニョン
ドクスの母/チャン・ヨンナム
ドクスの叔母/ラ・ミラン
ユン・クッスン/キム・スルギ
父と妹と離れ離れに

1950年、ドクスとその家族たちは、興南から船で脱出するために避難しているときに、ドクスは妹のマクスンの手を離してしまいます。
父から、絶対にマクスンの手を離すなと言われていたのに…とドクスはその後の人生の中でずっと後悔し続けます。
しかし、この船での避難は縄梯子で小さな船から大きな船に乗り換える間に、冷たい海に投げ出され、多くの人が亡くなっています。
その様子が、リアルに描かれ、心が痛みます。
僕たちは遊びに行くんじゃない
このとき、ドクスも、まだ小さな子供です。
そして、ドクスはマクスンに「マクスン、僕たちは遊びに行くんじゃない。兄ちゃんの手を離すなよ」と必死で話しかけます。
しかし、マクスンは逃げ延びようとする人に肩を捕まれ、ドクスの手を離してしまいます。
父は、マクスンを助けるために、やっと乗れた船から飛び降ります。
そのときに、ドクスは父から「俺がいなくなったらお前が家長だ。家長はどんなときも家族が優先だ。今からお前が家長だ。家族を守れ」と言い聞かされます。
小さなドクスに、家族を守れと言った父も辛かっただろうと思います。
しかし、父の言いつけどおり、ドクスはこの先もずっと父とマクスンを待ち続け、家族を守り続けるのです。
ドクスの夢は船長になること

ドクスの夢は、大きな船の船長になることでした。
現代(ヒュンダイ)の創業者
ドクスは、親友のダルグと一緒に靴磨きの仕事をしているときに、ある身なりの立派な紳士の靴を磨いたことがありました。
その紳士に「夢は何だい?」と聞かれ、ドクスは「船長になること」と答えます。
紳士は、「僕の夢は船を作ることだ。そして、その船を売る」と。
この紳士こそが、韓国を代表する企業・現代(ヒュンダイ)の創業者チョン・ジュヨン氏でした。
不思議そうにその紳士を見つめるドクスとダルグ。
この頃は、車や船が韓国産になることなど、夢のまた夢だったようです。
戦争が終わった
ラジオのニュースで、イ・スンマン大統領の演説が流れてきます。
そして、戦争が停戦になると伝えられます。
ドクス一家は、故郷に帰れると思ったようですが、結局帰ることは出来ませんでした。
マクスンとお父さんは、今、どこにいるのでしょうか。
ドクスは西ドイツに出稼ぎに

成人したドクスは、家族のために一生懸命働いています。
ソウル大学に合格した弟のスンギュ
ドクスの弟のスンギュは、とても勉強が出来ます。
ドクスは、何とかしてスンギュを大学に行かせてやりたいと思います。
今でも働きづめのドクスでしたが、スンギュを大学に行かせるためにはもっとお金が必要です。
ドクスは、迷ったときや困ったとき、父の写真が飾ってある部屋で父と話をします。
スンギュは兄ばかりを働かせているのが心苦しく、自分が西ドイツの鉱員になると言い出します。
しかし、それを聞いたドクスは、親友のダルグとともに鉱員採用試験を受け、見事合格。
自分の国家試験受験は後回しにして、西ドイツに行くことになりました。
採用試験のシーンのファン・ジョンミンさんの演技は、とてもユーモラスで可愛らしいです。
ここも本作の見どころです。
ドクスの恋

西ドイツでの鉱員の仕事は、思っていた以上に大変なものでした。
怪我も多く、ドクスはホームシックにかかってしまいます。
ヨンジャとの出会い
ドクスが川沿いを自転車で走っていたときのこと。
どこかから歌声が聞こえてきて、そこには美しい韓国人女性がいました。
見とれて自転車でころんだドクスを、彼女が手当してくれました。
彼女は、イ・ヨンジャという看護学校の学生でした。
鉱員・看護師交流会で親しくなり、二人は韓国料理を一緒に食べたり、ピクニックに出かけたり…。
楽しいひとときを過ごしていたのですが…。
炭鉱のガス漏れ事故
ある日、突然、炭鉱のガス漏れ事故が発生します。
逃げる途中で、親友のダルグが取り残されそうになり、置いていけないドクスはダルグを助けに行き、自分も崩れてきた鉱石に生き埋めになりそうになります。
事故のことを聞いたヨンジャは、その場に駆けつけ、ドクスとダルグを助けたいと炭鉱の関係者に懇願します。
それを見ていた同じ韓国人出稼ぎ労働者たちは、二人を助けに炭鉱に入っていきます。
この事故のときにも、ドクスはマクスンのことを思い出します。
このシーンも、涙腺崩壊でした。
帰国するドクス
事故後、大金を稼いでドクスは帰国します。
大喜びで迎える家族たち。
ドイツでどれだけ苦労したかを、ドクスは話そうとしません。
「俺は大丈夫だ」
ヨンジャとの結婚
3ヶ月後、ヨンジャもドイツから帰国してきます。
妊娠したというのです。
もちろん、ドクスの子供です。
二人は、質素ですが、家族や友人から祝福されて結婚します。
ドクスの人生
ドクスは、ドイツの次に、ベトナムに出稼ぎに行くことになります。
海洋大学に合格したドクス
大きな船の船長になることが夢でずっと勉強していたドクスは、海洋大学に合格します。
しかし、ちょうどその頃、妹の結婚や「コップンの店」をやっていた叔母が亡くなり、大酒飲みの叔父が店を売ってしまいます。
ドクスは、父と再会を約束した店なので、どうしても売りたくなかったのです。
そして、今まで必死で稼いできたお金で「コップンの店」を自分で買い取ることにしました。
そのため、やっとの思いで合格した海洋大学に行くことをあきらめ、今度はベトナムに出稼ぎに行くことになりました…。
ヨンジャは、家族の犠牲になってばかりのドクスに「これからは自分の人生を生きて」というのですが…。
ドクスが、どれだけ悲しく悔しかったかと思うと、胸が痛くなります。
風が吹いて空へと持っていかれる海洋大学合格通知が、悲しかった…。
ベトナムで九死に一生を得る
ドクスは、手紙ではベトナムはいいところで気楽に働いていると書きますが、ベトナムは戦場です。
爆撃にも合い、ベトコンにも狙われて命を落としかけています。
しかし、ドクスは、「つらい時代に生まれ、この苦しみを味わったのが、子供たちじゃなく僕たちでよかった」とヨンジャへの手紙に書くのです。
なんて、優しく強い家長であり、父親なんだろう…。
人は優しくなるには、強くなければならないと実感させられます。
ベトナムでは、ドクスが興南から逃げてきたときと同じような出来事が起こります。
ベトナムは、やはり、悲惨な戦場でした…。
ドクスは左足を失ってしまいます。
それでも、ドクスはやはり…
「大丈夫だ。本当にいいんだ」
ちなみにダルグは、ベトナムで救った美しいベトナム人女性と結婚しますw。
女性が大好きなダルグでしたが、やっと生涯の伴侶を見つけたのです。
昔の自分と重なって
ドクスは、年を取ってから、若者たちが韓国に出稼ぎに来ている外国人を馬鹿にしている場面に遭遇します。
その外国人たちはただコーヒーを飲んでいただけなのですが、「コーヒーなんて飲める身分か!」と若者たちは笑うのです。
それを聞いたドクスは、昔の自分と重なり、怒りを顕にします。
この怒りは、自分が歩んで来た道があまりにも険しかったことから、出稼ぎ者の悲しみがドクスにはとてもよく分かるのです。
人生の中で起こる悲しい出来事も、全て無駄ではないということが伝わるエピソードでした。
マクスンとの奇跡の再会
朝鮮戦争のときに、生き別れになった家族を探す特別番組がTVで企画されました。
その番組に参加したドクスは、奇跡的に妹のマクスンと再会することが出来ます。
マクスンは、ドクスと別れたあと、釜山で保護され、そこからアメリカに養子に出されたのです。
そして、マクスンはドクスに「マクスン、僕たちは遊びに行くんじゃない」と言われたことをはっきりと覚えていたのです。
残念ながら父とは会うことは出来ませんでしたが、マクスンとは奇跡的に再会することが出来ました。
ずっと、手を離したことを後悔し続けていたドクスは、やっと救われたのです。
映画「国際市場で逢いましょう」感想 最後に
映画「国際市場で逢いましょう」の感想でした。
子供の頃、父に言われたようにドクスは生涯、家長としての役目を果たしました。
ドクスは、父との「コップンの店」で会おうという約束のために、命がけでお店を守りました。
そして、いつも「俺はいいんだ。大丈夫だ」と言い続けてきました。
しかし、母が亡くなったあと、ドクスは父の写真に向かって…
涙を流しながら初めて「十分頑張っただろう?だけど、本当につらかった」と言います。
ドクスの強さと優しさ、家族愛、友情。
人生において、何が大切なのかを伝えてくれる素晴らしい映画です。
本作には、ベトナムへ出兵した韓国人兵士だった大物歌手ナム・ジン役で東方神起のユンホが出演しています。
また、一流デザイナー、アンドレ・キムが「コップンの店」に布地を買いに来るシーンもあります。
ドクスは、ヒュンダイの社長にも子供の頃出会っていて、有名人とたくさん接点があったのも、本作の楽しみの一つです。
ネタバレで感想を書きましたが、それ以上に映画が伝えてくれるものは大きいです。
そして、何よりも主演のファン・ジョンミンさんの演技が魅力的です!
ぜひ、ご覧になってあたたかい涙を流してください。

本ページの情報は2021年4月時点のものです。
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