こんにちは。
はるき ゆかです。
映画「さくら」の感想です。
西加奈子原作小説の映画化です。
とにかく、原作の「さくら」が今まで読んだ本のベスト10に入るくらい良かったので、映画もとても楽しみにしていました。
そのため、原作に思い入れが強すぎるので、映画は別物として感想を書きたいと思います。
映画「さくら」の感想 はじめに
あらすじ
音信不通だった父が2年ぶりに家に帰ってくる。スーパーのチラシの裏紙に「年末、家に帰ります」と綴られた手紙を受け取った長谷川家の次男・薫は、その年の暮れに実家へと向かった。母のつぼみ、父の昭夫、妹の美貴、愛犬のサクラとひさびさに再会する。けれど兄の一(ハジメ)の姿はない……。薫にとって幼い頃からヒーローのような憧れの存在だったハジメは、2年前のあの日、亡くなった。そしてハジメの死をきっかけに家族はバラバラになり、その灯火はいまにも消えそうだ。その灯火を繋ぎ止めるかのように、薫は幼い頃の記憶を回想する。それは、妹の誕生、サクラとの出会い、引っ越し、初めての恋と失恋……長谷川家の5人とサクラが過ごしたかけがえのない日々、喜怒哀楽の詰まった忘れたくない日々だ。やがて、壊れかけた家族をもう一度つなぐ奇跡のような出来事が、大晦日に訪れようとしていた_。
[引用元]映画「さくら」公式サイトあらすじ
【監督】矢崎仁司
【脚本】朝西真砂
登場人物
長谷川薫・語り/北村匠海
長谷川家の次男。風薫る季節に生まれたので薫と名付けられる。薫は兄の一をヒーローだと思っている。
長谷川美貴/小松菜奈
長谷川家の末っ子。わがままで気が強く、とても美しい容姿をしている。兄の一が大好き。
長谷川一/吉沢亮
長谷川家の長男。何でも出来て頭も良くて、女の子にもモテる。しかし、ある日交通事故にあって…。
長谷川つぼみ/寺島しのぶ
長谷川家の兄弟妹の母。明るく優しくて、お父さんのことが大好き。
長谷川明夫/永瀬正敏
長谷川家の兄弟妹の父。運送会社に勤めており、各トラックのコントローラー。しかし、突然行方不明になる。
サクラ/ちえ
長谷川家の犬。人懐っこくて優しい子。長谷川家の歴史を見てきた。しっぽで感情を表現するのが得意。
大友カオル/小林由依(欅坂46)
美貴の親友。卒業式で周囲を驚かせることをやってのけるかっこいい子。
矢嶋優子/水谷果穂
一の彼女。家庭環境が複雑。とてもきれいな女の子。母の都合で九州に引っ越していく。
須々原環/山谷花純
薫の彼女だった帰国子女。成績はいつもトップ。
溝口先史/加藤雅也
父の同級生で、今はゲイバーのママ・サキコ。人の痛みのわかる優しく心の温かい人。
フェラーリ/趙珉和
一たちがいつも遊んでいた公園にいた奇妙な人。
兄ちゃんはヒーロー

子供の頃の薫(北村匠海)にとって、兄の一(はじめ・吉沢亮)はヒーローでした。
イケメンで勉強もスポーツも得意な一は自慢の兄で、薫はいつも兄にくっついていました。
兄となら、公園にいる奇妙なおじさん『フェラーリ』にも立ち向かえました。
美貴の誕生
そんな仲のいい二人に、妹が生まれます。
お父さん(永瀬正敏)は、なんて美しくて尊いんだと言って涙を流します。
そして、美貴は大切に甘やかされて育てられます。
そのため、少々わがままで破天荒な娘に育ってしまいます。
美貴(小松奈々)は、ずば抜けて容姿端麗で誰からも「きれいな女の子」と言われています。

一と薫は、美貴をとても可愛がっています。とにかく、二人のお兄ちゃんたちは、妹のかなり破天荒な性格に慌てさせられますが、それもまた可愛いのです。
お花を摘みに
可愛い妹・美貴のために、幼い一と薫はお花を摘みに行こうとして、家からとても遠いところまで来てしまい、気づいたら夜になっていました。
心配した両親は警察に捜索願を出したほどです。
しかし、一は、美貴のためにお花を摘みに行ったとは一言もいいませんでした。
パトカーに乗せられて家に送ってもらったときも、一は薫の手をずっと握っていてくれました。
薫は、そんな一のことをすごくかっこいいと思いました。

兄弟の仲の良さがとても微笑ましい。薫にとって、お兄ちゃんは誰よりもカッコよくて憧れの存在なのです。
一が大好きな美貴
美貴は上の兄の一が大好きでした。
夜寝るときも、兄と一緒にベッドで眠ります。
それまで住んでいた長谷川家の家は、小さな家でしたが、お父さんが頑張って、兄弟妹にそれぞれ一部屋与えられるくらいの大きい家を買ってくれたのです。
その家には大きな庭もついています。
サクラとの出会い
新しい家には広い庭があったこともあり、美貴が犬を飼いたいと言い始め、美貴と薫はご近所に生まれた犬をもらいに行くことになります。
美貴がこの子がいいと決めた子は、元気でコロコロした子犬でした。
しかし、薫が選んだのは、じゃれる子犬を後ろの方でただ見ているだけの大人しいその子一択だったようです。
「薫はずるい」と言いながらも、美貴は子犬を気に入って愛しそう抱きしめます。
これが、長谷川家とサクラ(ちえ)の出会いです。
この世界にこんなに可愛くてあたたかい生き物が存在することを、薫と美貴は初めて知るのです。
このサクラの存在は、一家にとってとても大切なものです。
サクラはこの一家の立派な家族になっていくのです。
この後起こるこの幸せな家族を襲う悲劇さえも、サクラが癒してくれるのです。
子供の頃の兄弟妹
長谷川家の兄弟妹たちは、とても幸せでした。
仲のいい両親と大きな家、可愛い犬と家の近くには駆け回れる遊び場がたくさんありました。
この幸せがずっと続くと思っていたのに…。
手紙

ある日、父宛てにサキコという”女性”から手紙が届きます。
つぼみ(寺島しのぶ)は、焼きもちを焼いて大激怒。父の卒業アルバムを持って来させて、どの子か教えろと言って…。
サキコという女性からの手紙
昭夫が指さした写真は、溝口先史という男の子でした。
つぼみをはじめ、一(吉沢亮)、薫(北村匠海)、美貴は、「え?」という顔に。
実は、溝口先史は、今はゲイバー「ラガーウーマン」のママ・サキコ(加藤雅也)になっていました。
サキコは自分がゲイであることを昭夫に打ち明け、とても励まされたのでした。
そのときにお世話になったお礼の手紙だったのです。
長谷川家は、サキコのお店に招待され、みんなサキコのことが大好きになります。
特に、美貴は。

美貴は、破天荒でわがままな子でしたが、偏見がなくて見た目と共に心がとても純粋な女の子なのだと思います。だからこそ、『わがまま』なのかもしれません。
サキコさんを演じた加藤雅也さん
私は、加藤雅也さんが、どんな役で出演されるのかを知らずに映画を観に行ったので、映画館でちょっと変な声が出てしまいましたw
しかし、原作でもサキコさんは、これから訪れる長谷川家の不幸も、懸命にサポートをしてくれる優しい人です。
お父さんは、ゲイかそうでないかなど関係なく、サキコさんの人間としての本質を理解していたのだと思います。
加藤雅也さん、最近は悪役を演じられることも多く、アクションシーンやワイルドな道を極めた方々の役などのイメージがあったので、サキコさん、すごく可愛かったです!
一の彼女・矢嶋さんからの手紙
一には、矢嶋優子(水谷果穂)というとても美しい恋人がいました。
矢嶋さんは家庭環境が複雑で、虐待を受けていた経験もあったようです。
矢嶋さんが長谷川家に遊びに来ることになった日、両親はおしゃれをしてソワソワ。
大歓迎で迎えたのですが、矢嶋さんはあまり愛想がよくなく、母のつぼみ(寺島しのぶ)は少しがっかりしていました。
しかし、一は矢嶋さんを心から大切に思っていました。
そんな矢嶋さんが、九州に引っ越すことになりました。
一と矢嶋さんは、いつか結婚しようと約束をしています。
お互い、毎日手紙を出し、電話をかけると言って、矢嶋さんは九州に行ってしまいました。
しかし、矢嶋さんからの手紙がある日、ぱったりと来なくなります。
落ち込む一。
ただ、これには理由があって…。
本作「さくら」は、1980年~1990年代の時代設定なので、今のようにスマホなどなかった時代。
遠距離恋愛は、今よりずっと難しいことだったのですが…。
神様のボール

ある日、目覚まし時計の電池が切れて時計が止まっていることに気づいた一。
「電池を買いに行ってくる」と自転車で家を出ます。
数時間経っても帰って来ないことを心配しだす美貴。
一が交通事故に遭って
一は、スピードを出して走って来たタクシーにはねられ、病院に運ばれていました。
一は下半身に麻痺が残り、顔の右側が削り取られたような傷が残りました。
元々、美しい顔立ちの一にとって、顔を褒められることはあっても、自分の顔を見て逃げていく人や目を逸らされることになるとは、夢にも思っていなかったと思います。
さらに、車椅子生活になったことも、一を精神的に追い詰めました。
あんなにスポーツ万能で溌剌として、優しくてカッコよかった兄が、いつも荒れていて気難しくなり、長谷川家の人々は一にどう接していいのか戸惑うばかりです。

みんなのヒーローだった一の変わりよう。気持ちはとてもよくわかりますが、きっと周囲はどんなふうに接していけばいいのかわからなくなってしまいます。その空気が一にとって、また辛いものだったのかもしれません。
あたたかくなったらサクラの散歩に
一は、あたたかくなったら、「サクラを散歩に連れて行くよ」と言います。
ある春の日、一はサクラを連れて近くの公園に車椅子に乗って出かけます。
何度手紙を送っても矢嶋さんからは返事が来ない。
こんな姿になってしまって、身体も動かない。
今まで順調に運んでいた人生が、何一つ思い通りにならない。
神様は受け止められないボールばかり投げてくる。
ギブアップ。
そして、一が選んだ道は…。
父・昭夫の失踪
その後、父の昭夫が、突然家を出ていってしまいます。
しかし、決まって生活費だけは振り込んでくれていました。
昭夫は、運送会社で働いていたのですが、失踪していた間はどこで何をしていたのかわかりません。
そして、薫は東京の大学に進学し、長谷川家にはつぼみ、美貴、サクラの女性だけで生活していたのですが、二年経って昭夫はひょっこり戻ってきたのです。
スーパーのチラシの裏に、「年末、家に帰ります。おとうさん」と書かれた手紙が薫の元に届きます。
そして、薫も帰省することにしました。
サクラがいたから

本作の中で、薫の「それ以来、サクラはおしゃべりをしなくなった」という語りが入ります。
おしゃべりな女の子・サクラ
これは小説の中でも、とても重要な言葉なのですが、原作を読んでいない方には、少し意味不明だったかもしれません。
映画では、サクラはしっぽを振ることで、長谷川家の人に話しかけていたように表現されています。
サクラがいたから
私は、原作を読んでいたとき、サクラのおしゃべりが、サクラの存在が長谷川家を一つにしていたのだと感じていました。
それは、犬と共に暮らしたことのある方にはとてもよくわかることだと思います。
そのサクラがおしゃべりをしなくなったことで、幸せだった長谷川家はバラバラになってしまったのだと。
原作の中で、サクラはとてもおしゃべりなのです。
女の子らしい言葉遣いで、たくさんおしゃべりします。
その可愛らしさを、ぜひ原作で感じてほしいと、映画を観ていて思いました。
これは、映像化するには難しいことだとは思いますが、少し残念なところでした。
サクラがぐったりとして
久しぶりに昭夫が帰って来た大晦日。
長谷川家は昔から、お正月にはおせちではなく、大量の餃子を食べることになっています。
それは両親の初デートが餃子屋さんだったからです。
その年の大晦日も餃子をたくさん作ります。
そして美貴は、いくつかの餃子に仕掛けをします。
正露丸や梅干しなどをわからないように仕込むのです。
そんな大晦日の夜、サクラを家に入れようとした美貴が、「サクラ!サクラ!」と庭で叫んでいます。
犬小屋の中で、サクラがぐったりとして横たわっていたのです。
昭夫が「病院に連れていこう!」と言いますが、その日は大晦日の夜。
開いてる病院があるとは思えないのですが、元運送会社でトラックのコントローラーをしていた昭夫には、この地域の建物の場所が、全て頭に入っているのです。
次々と動物病院を訪ねますが、やはりどこも開いていない…。
もう12歳になっている老犬のサクラは、どうなってしまうのでしょうか。
重要な部分のネタバレはしたくないので書きませんが、このサクラのエピソードの顛末が、本当に素晴らしいのです。
原作では、読みながら大笑いして号泣。
映画も、すごく素敵なシーンです。
関西が舞台の映画「さくら」
本作の原作、西加奈子著「さくら」の舞台は関西です。
映画も関西が舞台になっています。
関西人として
本作「さくら」のキャストは、一、薫、美貴、昭夫とつぼみも、イメージにぴったりです。
ただ、関西人の私としては、関西弁のセリフがちょっと残念でした。
完璧に関西弁を使えていたのは、奈良出身の加藤雅也さんくらいかなぁ…と。
ある程度仕方がないとは思いますが、もうすこし関西弁をうまく使っていただきたかったです。
とてもいい映画なのですが、関西人であるがゆえに、私はそこが気になって映画に集中できなかったのが唯一の残念ポイントでした。
映画「さくら」の感想 最後に
映画「さくら」の感想でした。
映画館では、すすり泣く声が聞こえるほど、悲しく重いシーンがいくつか出て来ます。
しかし、原作の中で私の大好きなシーンが見事に描かれていたことには感動しました。
それは、幼い美貴につぼみが「生命の誕生」について話して聞かせるシーンです。
とても美しく、命の誕生がどれほど尊いことなのかを感じさせてくれます。
それと、美貴の親友のカオル(小林由衣)の卒業式のシーンも、素晴らしい。
ちょっと乱暴ですが、いいシーンだと思います。
カオル、かっこいいです!
本作「さくら」、おすすめの一本です!
そして、原作の方もぜひ読んでみてください。
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